株式会社松沢漆工房

Matsuzawa Urushi Kobo
漆の未来をつくる
since 2009

 
 

漆、漆芸、漆器、金継ぎ、各種漆塗装、修理、記念品製作、伝統工芸コンサルティング

ウルシ科の植物には、ハゼノキ、ヤマウルシ、ツタウルシ、ヌルデなどがありますが、漆液が採取できるのはウルシノキという落葉高木樹です。
 

二戸市周辺では毎年6月の終わりから7月の初めにかけてウルシの花が咲きます。一週間ほど小さな花を咲かせますが、その実はかつては貴重な和蝋燭の原料とされていました。今でも同じウルシ科のハゼの実を使い和蝋燭を作っている産地があります。
 
その木材は軽く、水に強い性質を持つ ことから、漁網の浮子(アバキ)として使用され、プラスチック製の浮玉に替わるまでは漆液に次ぐ重要な産物でした。現在は漆掻き職人の自宅の薪となっていることが多いです。漆を掻いた後の新たな活用策を模索しています。

漆液はウルシの葉や枝、根など全体に含まれていますが、職人は主に幹の部分から漆を採取します。
 

樹皮と材部の間に漆液溝という漆液の通る道があり、それを遮断するように傷をつけて採取していきます。一般的に年間400本のウルシの木から20貫目 (約75キログラム・漆は貫匁表示)を採取すれば一人前と言われます。

1本当たり約200グラム(牛乳瓶1本分)程度しか採れず、いかに貴重なものかが分かります。

山入り

その年に掻き採るウルシの木の本数を決め(一人山)、それを場所や地形などを考慮しながら四等分して四日間で回れるようにします(四日山)。4日間という のは、傷(辺)をつけたウルシの樹勢が回復するための日数で、より多くのウルシを採取するために考案された先人の知恵によるものです。

目立て

入梅の時期に、根元から20センチほどの高さの幹に2〜3センチの傷をつけて、この傷を基準として上方へ約30センチ〜40センチごとに同じ傷をつけてい き、反対側の幹にも交互するように傷をつけていきます。これは2回目以降の漆掻き(辺掻き)の基準点を決めると同時に、傷をつけることで木に刺激を与え、 漆液の分泌を盛んにするために行うものです。

辺掻き

5日目ごとに、前につけた傷の上に少し長めに傷をつけていきます。傷から滲み出た漆は篦(ヘラ)ですくい取られてカキタル(掻樽、タカッポともいう)に入 れられます。辺掻きは9月下旬頃まで行われ、この時期に採れた漆を辺漆といい、初辺(はつへん)、盛辺(さかりへん)、末辺(すえへん)に区分されます。

裏目掻き

辺掻きが終わると、目立ての下と辺掻きの上に幹を半周する傷をつけ、今まで傷をつけていなかった幹の上方にも傷をつけて漆液を採取します。

止め掻き

樹を一回りする傷をつけて採取するため、漆液の流れを完全に遮断してしまう方法。ここまでの一連の流れから「殺し掻き」という物騒な名前になっているのですが、自然の恵みである漆液を大切に一滴残さず取りきるという考えで採取しているのです。

枝掻き

止め掻きまで終わった後は伐採されますが、傷をつけていない枝を切って溜め池にまとめて漬けておいて水分を含ませ、枝の数カ所に一周するように傷をつけて微量の漆液を採取する方法です。枝掻きはその作業効率の悪さから今はほとんど行われていません。

漆の採取は単純なものではありません。木の特性を活かしながら、いかに効率よく採取すればよいか計画的、瞬間的に判断しているのです。
 

雨天時は漆の品質に影響を与えることから採取をやめます。また傷を深くすると木自体にダメージを与えるので
木の勢いを損なわないようにして、細心の注意を払いながら採取しているのです。