ユーザーの声 「浄法寺漆と私」

西出毬子様(漆芸家 オランダ在住)

(西出様は2017年春にお亡くなりになられました。ご冥福をお祈り致します)

 

漆の木が自らを守るために生み出す樹液を、ひとしずくひとしずくと頂いて得られる漆。そうした貴重な漆に、自分の人生の時間を一滴一滴と注ぐことで、作品を作る。
 
いにしえより上質の漆を産する事で知られた浄法寺は、現在も昔と変わらぬ方法で、丁寧に漆を採取する。その丁寧な仕事が、透明度に優れ、色漆を練るのにも、保護膜としての摺り漆をするにしても、色の表情を曇らせず、すっきりとそしてしなやかな仕上がりをもたらしてくれる漆を生み出す。わたしは、色漆を使った作品を作るので、この発色良さは作品の命である。
 
作品制作の他に、桃山時代あたりから欧州にもたらされ、美術館等に収蔵されている、古い漆芸品の修復保存を、自分の使命と思っている。日本の漆芸品の修復には、透明度が高く薄くのびて堅牢な浄法寺漆を使用している。
 
わたしは、日本産の漆のみをURUSHI と呼んでいるが、最近はJapanese lacquer よりもURUSHI という呼び名の方がカッコいい、と欧州人は言う。
 
西出毬子(オランダ在住)                                                                    http://www.urushi-kobo.com

 

田神稔夫様 (クラフト作家 静岡県在住)

 
七年ほど前まで、中国産漆をクロメた漆が一番キレイと思って使っていました。ある店から漆用品を買い求める中、はじめて日本漆を購入しました。その漆は浄法寺の漆掻き職人・大森清太郎さんが採取したもので、何ともフルーツのような優しい匂いが最初の驚きでした。どんな人だろうとたどり着いたのが、浄法寺漆産業のホームページで、大森さんの数々の偉業に触れ、日本産漆の現状などさまざまな問題を知りました。

 
四年前から漆の一滴、一滴を大切にする想いが深まり、大森さんから工藤さん、砂子田さんへとその方の漆を使う責任を感じながら、木の命を手渡していこうと思うようになりました。
 
浄法寺漆を使い始めてまだ日は浅いのですが、髹漆(きゅうしつ)の方法が受け継がれて千二百年、途方もない時間と先人の知恵に感謝。そして、漆の理解をより深めてくれた日本漆。やっと最近、仕事の質が変わってきたように思えます。
 
         静岡県、箱根の南麓から、玉匙工房 田神稔夫
http://www.tamasaji.com